短編 秘密 <高杉晋助>



 

鬼兵隊には秘密が存在する。

まあ、テロリスト集団なのだから秘密だらけで当たり前な所も仕方ない。が、いま言っている秘密はそういう組織的な秘密とは違う。

鬼兵隊隊士の間で暗黙の決りという意味での秘密。今日はその内の2つを紹介しよう。

 

「その一 総督の部屋には近づくな」

 

「その二(万斉様不在時に)万斉様の私室から人の気配がしても素知らぬ振りをする!これ絶対!」

 

これは鬼兵隊に入隊した新人隊士が最初に教えられる裏ルールである。

「その一」は総督の部屋である。むやみに近づくなという事なのだと理解する。実際には少し異なるのだがそれは後にしよう。

 

鬼兵隊幹部河上万斉にめでたく恋人が出来ました。

その恋人は事もあろうに敵方真選組の人間、名を「山崎退」という。しかしその山崎は驚くほど鬼兵隊の面々に歓迎されている。山崎本人の人柄も功を奏しているのだろうが「裏ルールその二」とともに語られる話の影響も大きいといえよう。

『山崎さんはめちゃくちゃ仕事が忙しい上に鬼上司にこき使われているらしい。もう万斉様の部屋でしか休めないらしい。だから万斉様の部屋から気配がしても山崎さんがぞんぶんに休息を取られているのだから邪魔しちゃいけません!』

 

こう諭されて新人隊士達は教育されていく訳で、山崎が鬼兵隊内で温かく受け入れられていくのは当然の事だった。

 

だが実際はこのルールも厳しく徹底されている訳ではなかったりする。

実際万斉が不在でも艦内のあちこちで隊士と仲良くお茶をしたり、他愛もない話をしている山崎の姿がよく見受けられる。

もう入隊しちゃえばいいのにと鬼兵隊隊士はみんな思っていたりするのだ。かなりの歓迎ぶりである。そのうち新人隊士たちとも打ち解けていくのだろう。そうして深みに嵌っていくのだ。

 

実はこうして回りから絡め取って、やわやわと首を絞め、後戻りできないようにしてやろうと暗躍している者がいる。

 

暗黙の決め事を作った張本人、それがここの総督高杉晋助その人だ。

 

実の所山崎は地味な外見ながら仕事のできる男だった。ポストも真選組副長直属の部下で監察筆頭だ。事がなれば真選組は優秀な監察を失う事になる。鬼兵隊にとっても有利な運びだ。何の見返りもなく受け入れてやる程高杉は甘い人間ではなかった。

だが実際、山崎の存在はもはや幹部達の「癒し」にもなっているのは事実。どうにかして手に入れたいと思っている。

 

だが未だ事がなるまではこれは高杉だけの秘密。

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退さんが受け入れられていく裏には高杉さんの暗躍とかあればいいなというお話でした。高杉さんは何の思惑も無く行動する人ではないと思っています。でも基本的には情に厚い人だとも思います。この話では全く伝わらないと思いますがPYONは高杉さん好きですからね、念の為。

あれ、前回の予告で次回は万斉さんだと書いたのに高杉さんになってしまった。
つぎも暗黙の決め事の「その一」についての予定なんで万斉さんの出番がなかなかないです・・・。もう、予定とか書くのはやめようと思いました。

<PYON>