[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

そして麻酔が切れた時 




★こちらのお話は「銀魂深夜の即興小説45分一本勝負」に挑戦したものです。



ちょっと暗くて、山崎さんの独白めいたものとなっとりますんでここにてワンクッション。どんな内容でもOKな方は下の方へどうぞ~です。

        ↓↓↓













「裏切り者」という言葉が俺の中で鳴り響いている。

それは、
組の仲間たちと他愛もない会話をしている時。
原田と酒を飲んでいる時。
沖田隊長と縁側で日向ぼっこをしている時。
仕事をしている時は・・・集中してるから気にならないかな。あ、あとミントンしてる時も!

だけど、そう。副長の前に立つ時、それは一段と大きく鳴り響くんだ。

山崎退という俺個人としては、副長を裏切るつもりも真選組を売るつもりもさらさら無い。真選組監察としては、どうなんだろうか。ま、攘夷浪士と内通している時点で局中法度違反で粛清の対象だよね。だけど、そこは監察筆頭の腕の見せ所。まあ地味で通っている俺だ。だれも俺が攘夷浪士と付き合っているなんて思わないだろう。それも過激派「鬼兵隊」の幹部、河上万斉と。


物静かなこんな夜は屯所を抜け出し万斉の元へと向かう。屯所にいると、息が詰まるのだ。屯所の壁や、天井、空気までもが「裏切り者」と自分を責めたてているように感じるから。
だから、せめてもの救いを求め万斉の元へ向うのだ。


突然隠れ家に現れた俺に万斉は何も聞かない。
だけれども魔法の言葉をくれる。

「世界の全てを敵にしようとも、拙者は退殿の味方でござるよ」

陳腐な台詞。そんな事は分かってる。だけれども、万斉がそう言って抱きしめてくれるだけで、今まで俺を苛めていた空気が温かく和らぐ気がする。別に言葉なんか要らないのかもしれない。ただ、万斉といるだけで心安らぐのだと思う。

もう、万斉なしでは平穏な日常は俺には無いのかもしれない。
屯所で何事もない顔でやっていくには「裏切り」から心を麻痺させなければ。いわば万斉はそのための麻酔。

こんなに苦しいのだから万斉との関係自体を止めればいいのだが、もうそれも出来そうもない。それ程までに絆が深まってしまっている。

だからなのか、最近麻酔の効きが悪くなっていると思うのだ。屯所にいても苦しいばかりだ。

今はまだいい。だけど、この麻酔が切れた時、とうとう麻酔が効かなくなった時、俺はどうしたらいいのだろうか。


屯所から山崎の姿が消えてなくなる日が、案外近いうちにくるのかもしれない。